2024年5月17日に道路交通法を改正する法案が全会一致で可決されました。道路交通法は私たちの生活に身近な車や自転車を運転する時に深く関わる法律です。1960年(昭和30年)6月25日に公布されて以来、時流に合わせながら改正されてきました。生活に密着する道路交通法ですが、今回の改正では何が変わり、私たちの生活にどのような影響があるのかを調べてみました。
(※本記事は、2024年6月18日現在の情報を元に作成しています。)
2024年(令和6年)の改正道路交通法のメインは自転車
今回の主な改正点は3つです。
- 携帯電話使用等及び酒気帯び運転の禁止
- 自転車等の安全を確保するための規定の創設
- 自転車等に対する交通反則通告制度(青切符)の適用
報道では3の青切符が主流になっていますが、一つずつ見ていきたいと思います。
①携帯電話使用等及び酒気帯び運転の禁止
自転車の携帯電話使用等に起因する交通事故件数は平成25年から平成29年までの期間と平成30年から令和4年の期間の累計を比較したときに、約53.9%も事故が増加しています。
また、自転車の酒気帯び運転による死亡重傷事故率は平成25年から令和4年の期間の累計において、酒気帯びとそうでない場合を比較すると約1.9倍も高い割合です。
こうした背景から、自転車の携帯電話の使用及び酒気帯び運転に対して罰則規定を整備することになりました。
飲酒運転に関しては、法律上もちろん禁止されていたのですが、何故か『自転車の酒気帯び運転』については罰則規定から除外されていました。(道交法117条の2の2第3号)今回の改正により、酒気帯び運転も罰則の対象となるようです。飲んだら乗るなですね。
なお、酒気帯び運転は、車と同様の3年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。
②自転車等の安全を確保するための規定の創設
これは車が自転車を追い越す時には、お互い気を付けようという趣旨を明文化したものです。
同じ方向に進行する車対自転車の事故割合は増加傾向(令和4年は53%にまで増加)にあります。これは時流として、車道にも自転車走行レーンが設けられ、一般的にも自転車は車道を走る認識が浸透してきた結果だと思います。また、邪推も含みますが、世間を騒がせたような自転車でいきなり前に飛び出して車の走行の邪魔をする事件もあったことも影響しているのではないかと思われます。
このような事故を防止するために、車は自転車を右から追い越す際に、十分な間隔がない時は、車は自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行し、自転車はできる限り道路の左側を走行するといったことを定めたものです。
今更そんなことわかってるよ。と思ったりもしますが、こちらも罰則を設けた義務になるようなので、厳守が必要です。
③自転車等に対する交通反則通告制度(青切符)の適用
報道でも取り上げられたように、今回の改正で生活に一番影響する部分であるかと思います。
この改正を一言で説明すると、『自転車も取り締まれるようになった。』ということです。
もちろん今までも取り締まりの仕組みは存在しましたが、手続き上の仕組みから実効性があるとは言い難いものでした。
今回の改正で16歳以上を対象に、原付や自動車と同様に反則金を課すことができる『青切符』制度を導入することになり、自転車への取り締まりが強化されることになると思います。
対象となる違反ですが、調べると報道各社によっても113種類や115種類程度といった表記にブレがあり、正式な種類は定かではないのですが、青切符の対象となるものは基本的に違反対象であると認識しておいた方がよいかもしれません。
ただ、自転車に関しては、むやみやたらに青切符を切るというわけではなさそうです。
今回の法改正の検討資料が警察庁HPにありますので、お時間ある方はご覧いただきたいのですが、交通量の多い時間帯や場所で事故に繋がりそうな行為に対して指導警告を行い、更に違反を繰り返したり危険行為とみなすものについては、積極的に取り締まりをおこなう方針のようです。
具体的には、
通勤通学時や薄暮時に交通が集中する駅周辺・通学路・自転車利用が多い地区を対象に、
○ 信号無視 ○ 指定場所一時不停止 ○ 通行区分違反(右側通行、歩道通行等)
○ 通行禁止違反 ○ 遮断踏切立入り ○ 歩道における通行方法違反
○ 制動装置不良自転車運転 ○ 携帯電話使用等 ○ 公安委員会遵守事項違反(傘差し)等
を重点的に取り締まるそうです。上記1.でも触れました新設された携帯電話の使用も、もちろん取り締まりの対象です。
飲酒運転や酒気帯び運転については、さらに重い赤切符が適用されます。
なお、従来はこの自転車の交通違反は赤切符で対応していました。この赤切符は裁判が行われ前科が付いてしまうものです。ですので、手続きも含めて自転車の違反には適用しにくいものでした。ですので、今回の改正によって、自転車への罰則を伴う取り締まりが強化されることは間違いないと言えるでしょう。
罰則金は?いつから違反になるの?
今回の自転車への青切符の反則金ですが、今後、政令によって定められるそうで、具体的な金額は今日現在決まっていません。しかしながら、一部報道では5000円から12,000円程度ではないかと考えられているようです。
また、この制度が開始されるタイミングですが、公布の日から2年以内とされています。つまり、令和6年5月24日から2年以内に青切符による取り締まりが始まります。この制度が始まる前には報道でも再度話題に上ると思いますので、再度チェックが必要ですね。
これからの自転車運転で気を付けること
我々の生活にとても身近な自転車への取り締まりが増えていく中で、より一層の安全運転が必要になってくると思います。
普段生活をしていて比較的目にする光景であるのが、イヤホンをしたまま運転をされる方です。若い方に多い印象です。もちろん走行中のイヤホンは禁止されています。
これは道路交通法ではなく、各都道府県公安委員会が運転手の尊守事項を定めた『規定』を設けており、その中にイヤホン禁止についてが定められています。ですので、各都道府県によって、言い回しはまちまちです。
一例を挙げてみますと、
高音でカーラジオ等を聴き、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽を聴く
北海道道路交通法施行細則 第12条(7)
など安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で、車両を運転
しないこと。 ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当
該目的のための指令を受信する場合にイヤホン又はヘッドホンを使用するときは、この
限りでない。
車両を運転するときは、音量を上げ音楽を聴く等安全な運転に必要な音声が聞こえないような状態にしないこと。
千葉県道路交通法施行細則 第9条(7)
イヤホンについて明記している都道府県もあれば、具体的な話をしていない都道府県もあります。ただし、共通して言えることは、自転車の運転に妨げになってはならないということです。
ここで参考になるのが、今回の道路交通法の改正に向け、令和5年7月25日に出された警察の取り締まりについての通達(国からの連絡)です。これから自転車の違反を取り締まる時は、この考え方に基づいてやってね。という言わば全国共通のルールブックのようなものです。その一部にはこのように記載されています。
イヤホン等を使用した自転車利用者に対する指導取締りに当たっては、イヤホン等の使用という外形的事実のみに着目して画一的に違反の成否を判断するのではなく、例えば、警察官が声掛けをした際の運転者の反応を確認したり、運転者にイヤホン等の提示を求め、その形状や音量等から、これを使用して自転車を運転する場合に周囲の音又は声が聞こえない状態となるかどうかを確認したりすることにより、個別具体の事実関係に即して違反の成否を判断すること。
イヤホン又はヘッドホンを使用した自転車利用者に対する交通指導取締り上の留意事項等について(通達)
つまり、イヤホンなのかヘッドホンなのかスピーカーなのかは関係なく、運転に支障があるかないかで取り締まりの判断を行うということです。
ただし、この通達ですが、本来の趣旨はまた別にあります。
こちらの一文もご覧ください。
イヤホン等を片耳のみに装着している場合や、両耳に装着している場合であっても極めて低い音量で使用している場合等には、周囲の音又は声が聞こえている可能性があるほか、最近普及しているオープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンについては、装着時に利用者の耳を完全には塞がず、その性能や音量等によってはこれを使用中にも周囲の音又は声を聞くことが可能であり、必ずしも自転車の安全な運転に支障を及ぼすとは限らないと考えられる。
イヤホン又はヘッドホンを使用した自転車利用者に対する交通指導取締り上の留意事項等について(通達)
つまり、「最近のイヤホンとかは技術も上がってきて周りにも注意できる仕上がりになっているし、周りの音が聞こえなくなるレベルでやらなければ良いんじゃない?」ということです。
なので、旧来よりあった両耳はNG、片耳イヤホンならOK、骨伝導はOK?NG?という論争について、形で判断するのではなく、運転に支障があるかないかで判断するということに軸を置きました。
ちなみにイヤホンには、ネックタイプのものもあります。これであればもちろん耳を完全に塞ぐこともありません。周囲の音も聞こえる状態は保てますし、軽い運動にも向いています。首にかけるタイプですので、大音量で聞くような特殊な使い方をしなければ、比較的運転の妨げにはならないと思います。
ネックスピーカーの紹介についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回の道路交通法の改正によって、生活に密着した自転車が青切符の取り締まりの対象になることがわかりました。
自転車はとても便利な反面、事故も多く、相手も自分も傷ついてしまう可能性も否めません。被害者にもなりえますし、加害者にもなりえます。
これを機に自分の自転車の運転は安全なのか。普段利用する道に危険な箇所はないのか。など、自転車について改めて確認するのも良い機会かもしれません。
ここまでご覧いただきありがとうございました。